お子様に多い耳の病気
急性中耳炎
急性中耳炎は乳幼児に好発する疾患であり、3歳までに約80%が罹患し、特に2歳までは免疫能が未熟であることから罹患しやすく、反復しやすいといわれています。また、こどもの解剖学的（構造）特徴も中耳炎を好発する理由の一つです。鼓膜の奥にある中耳腔と鼻の奥にある上咽頭は耳管という細い管でつながっています。こどもの耳管は成人と比べて太く、短く、傾斜がなく水平に近いため、風邪などの際に鼻や喉の病原体が中耳に入りやすい構造になっています。
急性中耳炎は、発熱、耳の痛み、聞こえにくさ、閉塞感、耳漏（耳だれ）などが主な症状としてあげられます。お子様がしきりに耳に手をやっていたり、機嫌が悪くなったり、発熱が続いたりするなどの異変が見られる場合、急性中耳炎である可能性もありますので、早めに当院までご相談ください。
滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは中耳腔に液体が溜まり、耳痛や発熱を伴わない中耳炎のことです。滲出性中耳炎の多くは、感冒時（かぜを引いた時）や急性中耳炎にかかった後に引き起こされます。主な症状は聞こえにくさや閉塞感ですが、発熱や痛みがないため放置してしまいがちです。ほとんどは3ヶ月以内に自然治癒しますが、症状が長引く場合は難聴による言語発達の遅れや学習の妨げ、さらには鼓膜や中耳の病的変化（鼓膜が薄くなったり硬くなる、耳小骨といわれる音を伝える骨が破壊されるなど）を起こします。症状が気になる場合はご相談ください。症状が繰り返している・長引いている場合は、耳鼻科に紹介させていただきます。
お子様に多い鼻の病気
アレルギー性鼻炎（花粉症など）
アレルギー性鼻炎は通年性（ダニ、ハウスダスト）と季節性（おもに花粉症）に分類されます。花粉症の患者さんは年々増加傾向にあり、さらにスギ花粉症では発症年齢の低下が明らかです。2019年に行われた全国調査（松原篤, 他. 日耳鼻 123: 485-490, 2020）によると、スギ花粉症の有病率は0-4歳で3.8%、5-9歳で30.1%、10-19歳で49.5%と、学童期以降に大きく増加しています。つまり、こどもであってもアレルギー性鼻炎と診断されることも珍しくありません。主な3症状は、くしゃみ、水様性鼻汁、鼻づまりです。また、鼻や眼の痒み、流涙、鼻出血、皮膚のかゆみ・発赤、咳などの症状が出ることもあります。
これらの症状により、睡眠や学業などに影響が出ることが知られており、治療によりその影響は最小限にできます。
副鼻腔炎（ちくのう症）
鼻の周りにある頬や額の骨の奥には副鼻腔と呼ばれる空洞があります。感染やアレルギーなどによって副鼻腔で炎症がおき、膿性鼻汁（黄色い鼻水）、鼻づまり、喉へのたれ込み、咳、頭痛、頬の圧迫感などが生じます。発症から4週間以内は急性副鼻腔炎、症状が3ヶ月以上つづく場合は慢性副鼻腔炎と診断されます。副鼻腔は2〜4歳にかけて急速に発育し、その過程で徐々に空洞になっていきます。副鼻腔の発育が未熟な乳児期は副鼻腔炎の頻度は少なく、4歳ころから発症しやすくなります。風邪などのウイルス感染がきっかけとなることが多く、症状が長引く場合は副鼻腔炎を発症していることも考えられます。症状が強い時や長引いている場合は抗菌薬治療を行います。
お子様に多いのどの病気
クループ症候群（急性喉頭気管気管支炎）
クループ症候群とは、喉頭（気管の入り口部分付近）が炎症によって腫れて狭窄、もしくは閉塞をきたす疾患の総称です。主には感染にともなう急性喉頭気管気管支炎のことを指します。3歳以下の乳幼児に起こりやすく、風邪症状に続いて出現する犬吠様咳嗽（「オットセイが鳴くような咳」、「大型犬が吠えるような咳」）が特徴的な症状です。症状が重くなると、息を吸うときにゼーゼーと音がする「吸気性喘鳴」や呼吸に合わせて鎖骨の上や肋骨の周りがくぼむ「陥没呼吸」が出現します。ステロイドの内服が有効ですが、症状が重い場合は入院が必要なこともあります。
